2017年6月2日金曜日

月影の鎖-錯乱パラノイア-/望月理也

松岡禎丞さん演じる
望月理也のネタバレ感想です。


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自分に出来ることをしているだけ。
あなたのその一言に
どれだけ救われたか知れない。


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花柳街の紅華楼で生まれた彼。
母はそこで働いていた女性で、
場所が場所だけに、
当然父は分からない。

幼い彼がそのまま
紅華楼に置いて貰えたのは、
男衆としていずれ働かせる為。

小さい頃からそこで育ったから、
割と早くに
何をする場所なのかを理解し、
だからこそ軽蔑した。
紅華楼に来る男たちを。
だって、そんな男たちの一人が、
自分の父だから。

きっとロクな男じゃない。
そんな血が半分流れている自分は、
生涯独身を貫こう。


そう決意した彼。

そんなある日震災が起き、
街は混乱を極めた。
その時にテキパキと指示を出し、
街を救った神楽坂。
その姿に感動し、彼も神楽坂の元に。
紅華楼で働きながら。

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観光で持っている島、紅霞市。
近年は観光客の数も減り、
財政難に苦しんでいた。
そこで市が
財政問題の解決をはかるため、
コンサルタントを雇い、
出された案が街に駐屯地を置く事。

ただでさえ観光客が減っているのに、
駐屯地なんて置いたら
ますます拍車がかかり、
確かに交付金は
得られるかも知れないが、
市民の生活が立ち行かなくなる。

だから、青年団を中心に
反対運動を起こしていたのに。

ある日、コンサルタントの深海が、
住民にバラしてしまったのだ。
頭の神楽坂は元軍人で、
軍を辞めているから
私怨で駐屯地に
反対しているんだ
…と。

駐屯地に反対する声が多く、
状況が改善しないからと、
水道税が徴収されたり、
紅市での購入制限など、
様々な住民への負担で
混乱していた人々は、
その不安や怒りを
誰かにぶつけたかった。

そんな時、深海によって
知らされた事実に、
彼らは飛びついた。

きっと誰でも良かったんだ。
ただ、負の感情をぶつけられれば。


そうして神楽坂を頭とする
青年団は苦しい立場に。

その頃彼女もまた、
水道税導入による商店街の
各店舗が値上げする中、
一人据え置きの料金で
赤字を出しながら
営業していた事が原因となり、
商店街の人々から
嫌がらせを受ける事に。

一人だけ儲けようとしている。

人はそういうけれど、
本当は赤字経営だし、
何より彼女はただ、
彼女の育ての母の螢の理念を
守りたかっただけなのに。

そうして互いに
窮地に追いやられた二人。

そんな中、
彼女が倒れた事をきっかけに、
彼が紅華楼で彼女を匿い
面倒を見る事に。

そこで二人の絆は深まったものの、
彼には決意があったから。
その決意がなかなか
二人が結ばれる事を許さない。

そんな二人の進展に貢献したのが、
なんと彼らの敵に当たる深海だった。

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深海もまた彼に似た生い立ちだった。
山村で母一人子一人で
暮らしていたのに、
母の美しさに嫉妬した村長の娘により、
深海親子は村はずれの
掘建小屋に追いやられた。

母は風邪を引いていて、
食べ物もない。
それでも、草や水で
飢えを凌いでいたある日、
村の男が訪ねて来た。
食べ物を持って母に体を求めに。

一度は突っぱねたものの、
息子を育てるために、
二人で生きるために、
母は息子を外で遊ばせ、
代わる代わる訪れる男たちに体を許し、
そうして食料を得るように。

次第に母の行為に
気づいた深海だったが、
母を傷つけないために
その事には触れず、
一人森で動物を捕る罠を仕掛けたり、
食料調達のための努力をし続けた。
それが母を助ける事になると信じて。

そうして、畑を耕し、
動物を捕る事が出来るようになった頃、
体が治りきらないうちに、
男たちにいいように弄ばれた母は、
その事が原因で
命を落としてしまった。

その後、村長に養父母を紹介され、
渡英までして学ばせてもらえる程の
裕福な暮らしを手に入れた深海は、
幸せを感じるたびに、
幸せに出来なかった母を思い涙していた。

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そんな過去が
深海の心の深い場所に根付いていた。

だからだろうか?
結ばれないもどかしい二人の、
無知な想いに興味を持ち、
二人が結ばれるようにけしかけた。

そうして、二人が
結ばれたら島から手を引くとまで。

結局、深海のその提案から
二人が結ばれる事となり、
二人の真っ直ぐな想いや、
彼の花柳街への想いを知り、
島から本当に手を引いた深海。

まだまだ島の経済は
上向いた訳ではなく、
財政難を打破する
必要があるものの、
これ以上に生活が
苦しくなる事もなくなり、
島は落ち着きを取り戻し、
彼女も以前同様に
店を営業出来るように。

彼は深海との出会いで
自分の無知を痛感し、
花柳街をなんとかするためにも、
島の財政難の対策のためにも
知識が必要と、
島から出て本土で学び、
島に作った学校の教員に。

それを機に
彼女に結婚を申し込んだ彼。

きっとこれからもこの島で、
二人で力を合わせて
幸せに暮らして行く事でしょう。