2017年3月12日日曜日

百花百狼/月花丸

羽多野渉さん演じる月下丸の感想です。


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貴方を殺すでも、貴方を守るでもない。
俺の中にたったひとつあったもの、
それは…貴方への愛でした。


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伊賀の忍びの息子に生まれた月下丸。
彼がまだ3歳の頃だった。
伊賀は信長により滅ぼされた。

生き残った多くの伊賀の忍びたちは、
甲賀に吸収される形で存続したものの、
長年敵対してきた間柄。
そうすぐに甲賀の仲間にと、
割り切れない者もいた。

その中の一人が彼の両親だった。

そうして信長の伊賀攻めから
生き残ったにもかかわらず、
残党狩りと称して、
甲賀に吸収されなかった忍びたちを
彼女の父である甲賀の長が殺した。

息絶える直前、
そんな甲賀の長、上野勘道への恨みから、
彼の母は、まだ幼い月下丸へと呪いを掛けた。
彼女の母、かがりのお腹の中の子供を
必ず殺すように…と。

だから側に居た彼女の母は、
深い呪いから子供を守る為、
殺す」の部分を「守る」と
反転させる術を掛けた。

誰よりも忠実な彼女の従者。
いつも彼女を最優先にする優しい彼は、
そんな二人の術によって出来上がった。

当然、そんな事など知らない彼と彼女は、
幼い頃から共に成長し、
いつも一緒に過ごしていた。

そうして過保護過ぎるくらいに
彼女を案じている月下丸だったが、
彼女が忍びとして働きたい気持ちを理解し、
初の任務には従者としてではなく、
共に戦う忍びとして臨む事に。

彼女の初任務は、京での仕事。
依頼主は石田三成。
近頃京を騒がせている石川五右衛門。
彼が次に狙う武家がどこなのかを
突き止めるという内容。

初の任務に緊張しつつも、
仲間と共に無事に任務を果たした彼女。

当初彼らの任務は、
情報を掴む事までだったものの、
石川五右衛門が忍び込んだ当日、
結局彼を取り逃がした事から、
忍びたちが捕物に力を貸す事に。

五右衛門を捕らえたのは彼女。
伏見城で行われた捕物を
たまたま見ていた秀吉が、
彼女を呼んだ事から
運命の歯車が狂いだした。

秀吉にお目通りをした彼女。
褒美をつかわすという秀吉が、
その褒美を取りにと隣の部屋に入った途端、
秀吉のものと思われる悲鳴が。
慌てて隣の部屋を覗くと、
そこには何者かによって殺害された秀吉が。

当然忍びである彼女に、
秀吉殺害の嫌疑がかかり、
彼女は捕らえられてしまう。

秀吉殺害の文を受け取った彼女の父は、
里への影響を懸念し、
彼女と親子の縁をきり、
他の忍びを里へと引き上げさせた。
そう、里を守る為にと、
彼女を見捨てた。

それでもそんな指示に納得出来ない彼は、
一人伏見城へと向かう。
そうして彼女を救出し、
実の父から見捨てられ、
里へも戻れない事を知った彼女。

更にはそんな彼女を助けた事で、
彼の事も巻き込んでしまった事を知り、
ひどく落ち込んでしまう。

そんな彼女を必死に励ます彼は、
抜け忍が住まうと言われる
隠れ里へと向かう。

それは遠い昔。
まだ彼女の母が生きていた頃の事。
万が一何かあった時には、
隠れ里を頼りなさい
…と。
彼女の母はそう彼に告げていた。

そこにたどり着けさえすれば、
きっと大丈夫。


そう思っていたのに。
甲賀の里では、彼女に彼が加担した事で、
里へ謀反の疑いが掛けられた事から、
その汚名を晴らす為と、
彼らを討伐する任が与えられた。

追い忍として放たれたのは全部で5名。
最初に出会ってしまったのは猿之介。
里でも一番の速さを誇る忍び。
そうして出会った彼に、
二人を討伐する為の追い忍が出ている事、
彼が彼女を助けた事で、
里に嫌疑が掛けられた事などを知らされた二人。

更には里の為に、
追い忍として放たれた猿之介は、
幼馴染である二人を殺すと言う。

数日前までは友達で、
一緒に京での任務もこなして、
毎日笑っていた仲間だったのに。

それでも彼は彼女を守りたかった。
たとえ友と戦う事になったとしても。
だから戦った。
そして彼女を守る為、
彼は大切な友人の命を奪った。

猿之介を始めとして、
追い忍として現れるのは、
伽羅、蝶治郎…と
二人と縁の深い者ばかり。

戦いたくない。
もう仲間を失いたくない。


どんなにそう思おうとも、
自分たちが生き延びる為、
友を討つしか道はない。

そうして次々と友を討つ中、
ついに隠れ里へとたどり着いた時、
二人は霞と出会った。

一度も任務をこなした事のない霞。
けれど、彼女と親しいという理由で、
今回の追い忍の命を受る事に。
けれど、大好きな彼女を殺す事など出来ないと、
諦めていた所で出会ったという霞。

それなら…と、
隠れ里の長に事情を話し、
霞もしばらく隠れ里で暮らす事に。

所が、霞は彼女の父に
家族を殺すと脅されていて、
彼女に蠱毒の術を使い殺そうとした。

その時に彼女は霞により知らされた。
彼が彼女を大切にするのは、
彼女を守ってくれるのは、
彼自身の意思ではない。
それは彼女の母の掛けた術によるものだと。

その頃、途中彼らと合流し、
一緒に隠れ里を目指していたものの、
追い忍だけでなく、
毛利や徳川の忍びまで出て来た事を
不審に思った黒雪は、
一人別行動をとり、裏で動くものを探りに。
そうして彼女に父から聞かされた。
放った5人の追い忍の最後の一人が、
黒雪の兄、月下丸である事を。

直接指示された訳ではない。
ただ、霞に託した彼女の母が、
死ぬ前に彼女に宛てて書いた文に、
彼に掛けられた術の話と、
その術の解除の仕方が書かれていた。

当然、ずっと術に縛られて来た彼を
開放したいと思った彼女は、
側にいる時間に
次第に彼への自分の想いに気づきつつも、
愛するからこそ、彼を自由にしたいと、
文に指示通りに術を解いた。

だって、術で側にいて貰って悲しいから。
彼には彼の意思で自由に生きてほしかったから。

けれど実際はもっと複雑で、
彼には彼女の母が掛けた術の前に、
彼の実の母の掛けた呪いがあったから。
そこに彼女の母の術だけ解いた所で、
彼は自由になどなれず、
ただ彼の中に母親の呪いだけが残ってしまった。

今まで一緒に逃げて来た彼。
誰が見捨てようとも、
実の父に見捨てられた時でも、
いつも彼だけは彼女を助け、
側にいてくれたのに。

そんな彼は、彼自身の母の呪いにより、
一番大事にしていた彼女へと刃を向けた。

そうして間一髪の所で、
すべての事情を把握している黒雪が駆けつけ、
彼女を助け、彼の母の呪いについて教えてくれた。

けれど、術の力で動いている彼は
とても強くて黒雪でも歯が立たない。
そうして黒雪は深手を負い、
彼女を殺そうとする彼と二人きりに。

彼に殺されるのなら。
それで彼の呪いが解けて自由になれるのなら、
私の命を捧げても構わない。


そう思った彼女は、
抵抗する事なく、
両手を広げて彼を迎えようとした。

愛してるから」と。

その言葉に彼の中で何かが変わった。
今まで術の力だけに支配されていた彼の中に、
彼自身の意思が芽生えた。

そしてその意思は、
彼女を殺したくない、守りたいと願った。

だから術に必死に抵抗し、
最後は自らを手にしている刀で刺す事で、
彼女を守った。

目の前で血まみれになり倒れる彼。
愛する人のそんな姿に愕然とする彼女の元に、
徳川の忍びたちが現れ、
彼女は半蔵により伏見城に連れ戻される事に。
彼の安否も分からぬまま。

たどり着いた伏見城には、
秀吉と彼女の父が居て、
二人から今回の事件の真相を知らされた彼女。
その内容は余りにも衝撃的だった。

息子の後見人を決めようとしていた秀吉は、
誰に任せるか決め兼ねていた。
そんな時石川五右衛門を捕らえる彼女を見て、
彼女に賭けてみる事に決めた。

そうして褒美の話を持ち出し、
隣の部屋に移動した秀吉は、
そこに居た自分の影武者を殺害し、
こっそりと部屋を後にした。

逃げる彼女に対して
放たれた追い忍は5人。
それぞれに五大老がついていて、
選ばれた忍びは単なる駒として、
生き残った者についたものを
息子の後見人として選ぶという茶番。

秀吉にとって、
彼ら忍びの命などその程度のもの。
あんなにも苦しみながら、
友と戦い、友を殺してきたのに。

そして父に至っては、
いつだって自分の事ばかり。
人の命などどうでも良かった。

そんな父と秀吉に
大切な仲間が、愛する人が殺されたと思うと、
彼女の中に獣のような心が芽生えた。

こいつらを許さない。
こいつらを殺してやる。


そう、彼らの命を花だと笑う秀吉達に、
狼になって復讐しようと決めた。

そうして武器も持たぬまま、
父と戦った彼女だったが、
戦闘で敵うはずもなく、殺されそうに。

そんな彼女を救ったのは、
彼女が最も愛した人だった。
そう、安否が分からないまま
隠れ里で別れ、
伏見城へついた時、死んだと聞かされた彼。

彼を死んだ事にし、
馬鹿馬鹿しい茶番を終わりにしてくれた半蔵が、
こっそりと彼を助けてくれていた。
更には彼女から預かった武器を
彼に託し、早く終わらせてくれ…と
彼を秀吉の元へと行かせてくれた。

彼の助けにより、
無事に伏見城を抜け出した二人は、
その後、命を落とした仲間の為に作った墓を
二人で順に回った。

すべての墓参りを終えた頃、
半蔵が現れて、
徳川の忍びとして働かないか?と誘われたものの、
今回の出来事で仲間を失った事から、
もう二度と忍びとしての仕事はしない、
普通に二人で生きていく決意を告げた。

術でもない、忠義でもない。
ただ心から彼女を愛しているから。
だから共に有りたいと願ったから。

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覚えていますか?
伏見城から貴方を連れ出した時、
俺は共に逃げて下さいと
あなたにお願いしました。


でも、今あらためてお願いします。
俺と共に生きい下さい。
そしてこれからも俺に貴方を守らせて下さい。
一人の愛おしい女性として。