2017年3月23日木曜日

鏡界の白雪/在間虚

逢坂良太さん演じる
在間虚さんのネタバレ感想です。


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どの僕も、
あなたが思うよりもっと前から、
あなたの事が大好きだった。


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在間虚。
空っぽの少年。
感情がないわけではないが、
何か思いが溢れて来ても、
それはまるで
シャボン玉のように消えてしまう。
だから何にも興味が持てなくて、
すべての事がどうでもいい。

それはまだ彼が幼かった頃。
その頃彼は、
本当の彼を失くしていなくて、
ただ少し内気で、自分の感情を出すのが、
得意でなかっただけの男の子。

幼いながらも、
そんな彼が一大決心をして、
小さな冒険へと家を飛び出した。
けれど、途中で道に迷って困っていると、
どこからともなく甘い柘榴の香りが。
その香りに誘われるように
たどり着いた所は教会で、
教会脇の木のしたで、
女の子が本を読んでいた。

その子の本を覗き込んだ事で仲良くなり、
彼女は彼に柘榴をくれたのです。
その時の彼女の笑顔が忘れられず、
多分、それが彼の初恋。
まだその頃は、
彼には感情があったから。
シャボン玉のように
消えたりしなかったから。

けれど、ある日、
彼の人生は大きく変わってしまう。
あの教会の木の側にいた彼は、
ある日、本当の彼を奪われてしまった。

本当の在間虚を奪ったのは鏡界の女王。
その正体はあの柘榴をくれた女の子。
その子があの木から落ちたとき、
もう一人の自分と共に
死んでしまうハズだった。
けれど、お母さんの呼ぶ声に応えるように、
彼女は母のもとへ。
もう一人の自分を残したまま。

引き裂かれた二人、
彼女から離れたもう一人の彼女は、
たまたま側にいた彼を
通り抜けてしまった。
もう一人の彼女が存在し続けるために、
通り抜けるときに、
彼の中から本当の彼を奪って。

そうして彼からは本当の彼が消え、
彼は何も持たない
空っぽの在間虚になってしまった。

突然本当の自分が消えた彼。
その様子に家族は驚き、
けれど最終的に、
感情らしい感情を
見せない子供を気味悪がり、
彼は一人なってしまった。
そのせいだろうか?
彼の中には新たに2つの人格が生まれた。
『俺』と『私』の2つの人格が。

何にも興味の持てない空っぽの彼は、
高校を卒業する頃、
卒業後の進路について親に尋ねられた。
でも、何にも興味が持てず困っていた所、
たまたま眞記さんの骨董屋にたどり着いた。

何度もそこに通っているうちに、
彼は眞記さんの所で暮らす事に。
親の所は居心地が良くなかったから。

そうして眞記さんの家で、
部屋の中に
実家で育てていた柘榴を持ち込み、
柘榴を育て、売ることに。

何にも興味がなかった彼が、
ずっと育てていた柘榴。
それは記憶がないながらも、
子供のときに
柘榴をくれた彼女の笑顔や、
あの甘い柘榴の匂いを
覚えていたからかもしれない。

そうして売り物に出来ない
柘榴を配っていた彼と、
柘榴が大好物の彼女は博物館で出会った。

その後、
度々柘榴を買いに来てくれる彼女と、
彼はいつしか親しくなった。

でも、彼は眞記さんの店で女王に出会い、
本当の自分を返して欲しかったら、
女王を手伝うように…と言われていた。
その内容が、彼女を連れ去る事。
女王は彼女を欲していた。
体から引き離され、
一人された事を恨んでいたから、
だから体を彼女から奪ってやろうと考えて。
だから彼女と親しくなったのは、
本当に彼の意思ではなかったかもしれない。
それこそ、最初は女王の命令で、
彼女のに近づいていたのかもしれない。

けれどいつからか違っていた。
だって、鏡界で
彼女と出会っていた彼の中の彼ら、
俺も私も、彼女をとても気に入っていたし、
女王から守りたいと思い始めていたから。

その後、彼女の体を求める女王にとって、
彼の中の二人の人格は邪魔だからと、
女王の魔法で眠らされてしまった俺と私。
彼女を認め、彼女を愛していた人格が、
女王により眠らされたからか、
彼からは、少し見え始めた
感情が消えてしまった。
まるで出会った頃のように。

何度も何度も二人で時間を重ね、
少しずつ彼が笑顔を
見せてくれるようになっていたのに。

それでも彼を救いたいと
願う彼女の思いが、
彼を、そしてひとりきりで
苦しんでいた女王をも救い、
彼の中に本当の彼が戻って来た。

溢れ出す感情。
俺の想い、私の想い、
それらが流れ込んで来て、
彼はどれが本物か
わからなくなってしまった。
どれが在間虚なのか?

僕は俺?僕は私?本当は誰?

どれも虚くんだよ。
全部虚くんだよ。


すべての人格を受け入れ、
すべての人格を
愛してくれた彼女の言葉に、
彼はやっとすべてを
受け入れる事が出来るように。

俺も私も、
顔をだす事はなくなってしまったけど、
でも確かに彼の中に存在している。
だって、本当の自分を取り戻した彼は、
今までとは全然違っていたから。
それは俺のようであり、私のようでもあった。

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あの日、木の下で、
柘榴をもらったときのあなたの笑顔に、
僕は恋をしていたのかもしれない。
そう、それが僕初恋。


やっと会えた。
ずっと会いたかった。