2017年3月2日木曜日

ヴァルプルガの詩/大神虎丸

小野友樹さん演じる大神虎丸くんのネタバレ感想です。


-----☆★☆-----



禍に冒され、次第に弱って
死んでいった母さんの姿。
あの姿が今もこの目に焼き付いてる。

だから怖いんだ。
好きになればなるほど、
あいつを母さんと同じように、
死なせてしまう気がするから。

-----

それはまだトラもリュウも幼くて、
禍を払う力も持たなかった頃、
二人は狼の姿でこっそりと、
里に降りて一人の少女と出逢いました。

そうして彼女を
立ち入り禁止のあの洋館に誘った。
二人…トラはすぐ彼女と親しくなり、

おかあさんはお仕事で忙しくて。
お兄ちゃんが病院の日は
おばあちゃんも居なくて。
一人でイヤだったけど、
今は寂しくないよ、
わんわんが居てくれるから。
わんわんは大事なお友達だよ。


そう言った彼女。

だから彼は彼女を
大事な友だちだと思っていた。
あの頃からずっと
…それは変わることなく今も。

そうして洋館に誘った事で、
彼女はあの化物に狙われる事になり、
彼女の祖母は
さきのえやみに冒されてしまった。

だから彼は責任を感じていた。
彼女の事が気になっていた。

登校時公園でいつも
二匹の犬(狼姿の大神兄弟)が居たのも、
彼女を心配し、様子を見てくれていたから。

そんな彼女があの幼い日の事がキッカケで、
化物に狙われ、隠世の実を与えられ、
心臓に血脈を埋め込まれた事で、
人ならざるものとなってしまった。

そんな彼女に選ばれた事で、彼は長となり、
彼女を妻とした。

次期長候補という事で、
彼に言い寄る女は沢山居た事から、
彼は女性が苦手になった。
けれど彼女だけは違っていた。
それは幼いあの日に
大事な友だちだと思ったから
…まだ本当の気持ちに気づかない彼は、
その理由をそんな風に考えていた。

だから事あるごとに
おまえは大事に友達だから」と口にする。

そのくせ、彼女が同じように
友達だから」というと、
何故かイライラしてしまう。

なんだよ、友達って…と。

更には彼女が他の男、
牙や弟のリュウと話しているのも、
なんだか見ていて腹立たしい。

それもきっと
彼女が大事な友だちだからなんだ。
そんな風に思い込もうとしていた。

けれど、彼は勿論、彼女もまた、
共に過ごす時間の中で、
相手を友達以上に思っていた。
たったひとりの特別な人だと。

その事にリュウの助けにより
気づく事が出来た二人。

けれど、彼は心に決めていた事があった。
里の娘は嫁にとらない…と。
だって彼の母は里の娘だったから。
普通の人間は禍に弱く、
長の嫁なんて立場は、
普通の人間よりずっと
禍に触れやすい立場だから。

そのせいで早くに亡くなった母。
だから大切に思えば思う程、
そんな危険から
彼女を遠ざけたいと思ってしまう。

けれど、彼女は
謎の青年の血脈や隠世の実のおおかげで、
今では人ならざるものとなっしまったから。
そしてその事を
トラと同じになれたみたいで嬉しい
と言ってくれたから。

だから本当は期待していた。
あの化物を倒した後も、
彼女がその力を身に宿したままだったら、
禍に触れても危険は少ないし、
妻として傍に居て貰えるんじゃないかと。

けれど、期待通りにはならなかった。
戦いが終わった後、彼女の手の甲から、
あの化物につけらりたあざが消え、
与えられた力も消えてしまったから。

だから彼はおまえがが大切だ、大好きだ
…という事を告げた上で、
牛尾さんに頼んで
幼いあの日のように記憶を消してもらった。
彼女の中から共に戦ったあの日々を。

そうして嫁としての暮らしを終えた彼女は、
迎えに来てくれた兄と共に、家に戻り、
まだ避難勧告が出ているので、
母のもとで兄と三人で生活を始める事に。

学校が再開される時期に合わせ、
再び街に戻った彼女。
トラとの事は友達して記憶に残り、
あんなに大切で大好きで守りたかった思いは、
牛尾さんに消された記憶と共に、
封印されてしまっていた。

それでも学校で彼らに会える事を
とても楽しみにしていた彼女。

けれど再開された学校に
二人が登校する事はなく、
学校誰もが、
一緒に何度も禍の事で話し合った兄までもが、
大神兄弟の事を忘れていた。
まるで最初からそんな人など
存在していないかのように。

あぁ、もう戻るつもりはないんだ。

気づいた彼女は悲しくなってしまう。
そうして悲しい思いを抱えている日々の中、
彼女は気づいてしまった。
自分は彼を友達として
見ていたんじゃないという事に。
好きになっていたんだ…という事に。

それでも、みんなの記憶から
自分たちを消した事は、
彼らが戻らないという意志だから、
忘れようと思う彼女。

だけど忘れられるハズもなく、
他の人に告白されても断る彼女のもとに、
牙の巳斗が現れた。

巳斗に案内されて行った公園には
リュウが待っていた。
彼が力を貸してくれたおかげで、
再びトラに会う事が出来、
互いの気持ちを再確認。

化物を倒すという目的なんてなくても、
一緒に居たいと気持ちを重ねた二人。

その後、彼女の高校卒業を待った二年後、
二人は本当の夫婦に。
使命のためではなく、
互いに互いが必要だから、
共に歩む事を決めた二人。

長という立場は大変かもしれないけれど、
一度手放して
その辛さを思い知った二人だから、
きっとその手を離す事なく、
共に歩んでいく事でしょう。